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研究紹介

プロジェクト(2)

精子幹細胞を用いた遺伝子改変動物作成法の開発

 

  GS細胞に試験管内で外来遺伝子を導入し、薬剤選択遺伝子を用いて樹立した細胞から、精巣内移植によって仔を作ることができます。私たちはこの方法を用いてマウスで遺伝子ノックアウト動物の作成に成功しました(Kanatsu-Shinohara M.et al., Proc Natl Acad Sci USA 2006;103:8018-8023)。この実験は組織幹細胞で初めて相同組み替えにより遺伝子破壊を行ったものであり、精子幹細胞を用いることで、ES細胞とは異なるアプローチで個体の遺伝子改変が可能であることを示しました。

mGS細胞

GS細胞への遺伝子導入と薬剤選択による遺伝子改変マウスの作成。

  ES 細胞による遺伝子ノックアウト動物の作成法は、マウスでは確立した技術となっています。しかしマウス以外の種では、残念ながら未だ十分な技術が確立されていません。近年、Crispr-Cas9による遺伝子編集技術の登場により多くの動物種で遺伝子改変が可能になりましたが、初期胚の操作ではモザイクな遺伝子改変がおこり相同組み替えが難しいという問題が残っています。正確な遺伝子改変を行うとなるとどうしてもES細胞に頼らざるを得ません。創薬や神経疾患、糖尿病などで必要とされる生理学的解析にマウスでは限界があるため、ラットやブタ・ サルなど、より大きく高次機能をもつ動物で遺伝子改変技術を確立することが強く求められています。またES細胞の維持状態もマウスとは異なり、例えばサルのES細胞などはキメラを作ることができません。その中でGS細胞は生殖細胞の中で唯一培養可能な幹細胞であり、相同組み替えによる遺伝子ノックアウトが可能であるためGS細胞を用いたアプローチは、ES細胞とは異なった可能性を持つ有力な候補だと考えられています(Izpisua Belmonte JC et al.,Neuron 2015;86:617-631)

  特に最近ではGS細胞での遺伝子抑制により減数分裂の誘導が可能なことがわかってきました。また、器官培養した精巣にGS細胞を移植することで子孫を得るアプローチも開発されています。私たちのグループでもセルトリ細胞の長期培養系を開発し、精巣の微小環境の再現に成功しました(Kanatsu-Shinohara et al., Cell Stem Cell 11, 567-578, 2012)。近い将来には移植に頼らずとも試験管内で精子を作ることで新しい遺伝子改変動物の作成法ができると期待されています。